音を作ったりゲーム作ってるロリコンの駄文 since.2005.11.17~

    奇病に塗れた世界4021-4022

     「お、ようやく3人娘のお帰りか、どうだったよ?」
     ドアを開けこちらに向かってくる3人に、チャラ男が声をかける。
     「別にどうも無かったわ、確かに誰も居なかったわよ」
     「へぇ……? それにしちゃ遅かったじゃねぇか、死体でも隠してるんじゃねぇかって相棒と盛り上がっちまったぜ」
     「この状況で死体なんてあったら悲鳴を上げるわよアタシは」
     「はっはっは、おい相棒、ツナギちゃんが乙女チックな冗談言ってるぞ、おもしれぇな」
     「お前な……」
     「こいつにはデリカシーってもんがないのかしら」
     チャラ男の言葉に呆れ、思わずツナギと目を合わせる。
     ――が、なぜか不機嫌そうに目を逸らされた。
     「……?」
     「で、マジで誰も居なかったのか?」
     疑問を口にしかける前に、先にチャラ男の口が開く。
     「だから誰も居なかったわよ、アタシと無口ちゃんが証明するわ」
     『右に同じ』
     「ふぅん……? ま、んなコトだろうと思ったけどよ」
     ツナギと無口の言葉に、一応の納得を示したチャラ男だったが、足を組み直してメイドに向き直る。
     「で? 『部屋の中に誰も居ないってこと』がどうかしたのか、メイドちゃんよ?」
     ――これは、そもそもメイドの質問に端を発している。
     誰もいないかどうか。
     メイドは頷く。
     「はい、皆さんの部屋の中に誰も居ないのであれば、私は少なくとも他の皆さんと違う症状なのだと思います」
     「へぇ……へぇへぇ、ほ~~ん、おいおい、こりゃまいったな」
     チャラ男が頭をボリボリと掻く。
     「そりゃ『そういうことか』?」
     「どういうことかは分かりかねますが――『そういうこと』かもしれません」
     「あ~~、でもそうか、そういうことか、いやなるほど、ってことは、はいはい、いやぁメイドちゃんは本当にメイドちゃんだわ」
     「……ありがとうございます」
     ワケの分からない会話だった。
     「あの、2人だけで納得してないでさ、アタシたちにも分かる様に説明してくれない?」
     「ん? ああ、まあ、なんつ~~かよ、メイドちゃんがメイドちゃんってだけで何者でもねぇってそういう話だ」
     「お前が何をいっているのかさっぱり分からん」
     「いいじゃねぇか、メイドちゃんの病気が他のヤツらと違う症状だって、本人が理解できてりゃよ」
     「そうは言うが……」
     チャラ男はすっかり冷めてしまったコーヒーをすする。
     これ以上、話すつもりは無いのだろう。
     「……無口はどういうことか、分かったか?」
     『大体は』
     「マジか……」
     話についていけない自分の理解力の無さが恨めしい。


     「――じゃ、あとは無口ちゃんだけよね」
     皆の視線が無口に集まる。
     「と、言ってもな……」
     「そうですよね……」
     「ま、だろうな」
     「よね」
     もはや語るべくも無い確認事項に、全員が首を頷くだけだった。
     『と言っても、何?』
     「何、と尋ねられても困るが……その、キミの病気は喋らないことと関係あるんだろう?」
     「普通に考えりゃそうだろ」
     「だよね」
     出会ってから未だに言葉を発しようとしない、わざわざ面倒なことにスケッチブックで筆談をしている――それらを鑑みれば、無口の症状は一目瞭然だった。
     『勘違いしないで欲しい』
     「勘違いもなにもな……『喋ることができない』病気じゃないのか? というより、それしか考えられないんだが」
     「単純に考えれば、それしかないわよね」
     単純明快な答えにチャラ男が口を挟んでくる。
     「おいおい待てよ、もしくは『喋ると何かヤバイことが起こる』とかも考えられるぜ?」
     「ああ、なるほど、そういう病気も考えられますね」
     「へぇ――やっぱアンタ頭の回転だけは良いわね」
     「だけ、って余計な一言がなけりゃ素直に喜ぶんだけどよぉ、なんつーかツナギちゃんってばオレに対して風当たり強すぎね?」
     「当然でしょ」
     軽口の始まってしまった場を他所に、無口は立ち上がる。
     『わかった』
     そう書き、胸に手を置く。
     「あ~~」
     「「「「っっ!?」」」」
     無口が出した初めての発声に、全員が驚く。
     『これで良い?』
     そう筆を走らせて、またソファに座る無口だった。
     「おいおい……」
     「こ、これで良いって、無口ちゃん、喋れるんじゃない!」
     『喋れないわけじゃない』
     「わけじゃないって――でしたら、どうしてそんな筆談なんて面倒なことを……」
     「あ~~、無口ちゃんよ、ちょいともう1回、今度は意味のある言葉を言ってみてくれねぇか?」
     メイドの言葉を遮り、チャラ男が手を挙げる。
     それを受けるようにして、今度は座ったまま無口が口を開く。
     「あいうえお、かきくけこ、さしすせそ、たちつてと――」
     早口に50音を順に並べていき、最後までひと息に言い切る。
     『これで良い?』
     「おう、あんがとさん」
     「無口ちゃん、本当に普通に喋れるんですね……てっきり奇病のせいで喋れないのかと思ってました」
     『しゃべるとメンドウ』
     「面倒ってアンタ、筆談の方が遥かに手間がかかるでしょうに」
     呆れたようにツナギが嘆息をつく。
     そして――やはり、チャラ男がその言の端に食いつく。
     「いや、ちと待ってくれや、『しゃべると面倒』で合ってるのか? 『しゃべるのが面倒』ではなく?」
     チャラ男の質問に、無口は首を縦に振る。
     『そう、しゃべると、めんどうくさい』
     「あ~~、なるほどなるほど、いや了解したわ」
     「だからアンタはまた1人で納得して……ちょっとは皆に分かる様に説明しなさいよ」
     「説明ってもなぁ……」
     チャラ男は困惑した表情を浮かべた。
     「つまりだな、無口ちゃんは喋れねぇわけじゃねぇ、単に喋りたくないわけだ」
     「説明になってないわよ」
     「いやいや、不可能と意思じゃ全然別物だろ――オレの軽口じみた推理もあながち間違っちゃいねぇんだろ」
     「……どの軽口だ、お前の軽口は多すぎてどれのことだか分からん」
     「アレだよ、アレ、『しゃべると何かヤバイことが起こる』ってヤツ」
     「えっと……特に何かが起きているようには見えませんが……」
     周りをおそるおそる見渡すメイドに、チャラ男が両手を天井に向ける。
     「別にヤバイことってわけでもねぇんだろうさ、ささいなことかもしれねぇし、オレたちにゃわかんねぇくらいの変化なのかもしんねぇ」
     「例えばどんなことよ?」
     「だからそこまではわかんねぇし想像もつかねぇ。つか、そのへんのコトを無口ちゃんは知られたくねぇんだとオレは思うぜ?」
     『吹聴するようなことじゃない』
     「だとよ」
     肩をすくめるチャラ男だった。
     「なんだかよく分かんないわね、無口ちゃんが喋ると何かが起きるってこと?」
     「……」
     ツナギの言葉を頭の中で反芻しながら、考えを巡らす。
     「……喋ることで、他の皆に危険を与えたりはしないのか?」
     「うぉ、相棒、これまたツッコんだこと訊くねぇ」
     軽口を横に流しつつ、男は無口を見つめる。
     澄んだ瞳は真っ直ぐに――そしてスケッチブックへ滑るように文字が流れる。
     『誓う。誰かに危害を与えることは、決してない』
     そう、書かれた。
     「……すまないな」
     『気にしないでいい、きちんと訊くべきことだとも思う』
     「そう言ってくれると助かる」

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